コラム

遺言に関する誤解とは

この記事では、「遺言に関するよくある誤解」について、日野市、八王子市、立川市を中心に相続手続・遺言作成サポートを行っている行政書士の大槻卓也が解説します。

近年、本やメディアで「終活」「相続」「遺言」などの内容が多く取り上げられているからか、次の表のとおり10年前と比べると遺言を作成する人は増加しています。

暦年遺言公正証書作成件数
平成22年81,984件
平成23年78,754件
平成24年88,156件
平成25年96,020件
平成26年104,490件
平成27年110,778件
平成28年105,350件
平成29年110,191件
平成30年110,471件
令和元年(平成31年)113,137件
日本公証人連合サイトより

遺言作成は他人ごとではなく、誰でも検討するべきことであるという認識が広がるのはとても良いことですが、現在でも遺言について誤解をしている人も少なくありません。

そんな遺言に関するよくある誤解を、ケースごとに確認していきますので、この記事を通じて遺言に対する理解を深めていただけると幸いです。

法定相続分どおりに分けるから遺言は不要

最も多いと思われる誤解は、「うちの場合は法律どおりに分割するから遺言はいらない」というものです。

たしかに法律上、相続人はそれぞれ相続できる取り分が決まっています。

たとえば夫が亡くなると妻は2分の1、子どもは2分の1をそれぞれ相続する権利があります。

しかし、これはあくまでも建前であって、実際は相続人同士で話合いがつけばどのように財産を分けても自由です。

法定相続分は、遺産を分ける際の目安にすぎないと考えたほうがいいでしよう。

また、財産のすべてが現金や預貯金ならともかく、財産の中には不動産や未公開株など換金がむずかしいものもあり、単純に法定相続分で分けるのは容易ではありません。

無理に法定相続分で分けようとすると、住むところを失う人が出るなど、何らかの支障が発生することも考えられます。

「法律どおりに分ければいいんだから」と安易に考えず、それぞれの相続人の生活を考慮した遺言をのこすことが望ましいといえるでしよう。

遺言を作成するほどの財産はない

「私にはたいした財産がないから遺言書は必要ない」という誤解も非常に多いです。

まず、財産の額がいくらであろうと相続手続が必要なことには変わりありません。

金融機関の預貯金に関する手続、不動産に関する手続など、その残高や評価額が低くても厳格な手続を進める必要があります。

この相続手続というのはとても厳格で大変なのですが、有効な遺言がある場合は大幅に労力を軽減することができます。

家族が亡くなるのはとても悲しく辛いものです。その大変な時期に遺族達が相続手続で困ることのないよう、財産が少なくても有効な遺言をのこしておくことはと意味のあることなのです。

家族が仲良しだから大丈夫

遺言は、「家族仲が悪い人が、死後にもめないようにつくるもの」というイメージが根強いですね。

もちろんその場合は遺言作成が必須といえますが、だからといって仲が良ければ遺言が必要ないというわけではありません。

例えば、いま家族仲がいいのは親がいるからであって、将来両親が亡くなり兄弟だけで相続の話し合いを始めた途端にトラブルに発展することはよくあります。

子ども同時の中が良くても、その配偶者や親戚が口を出してくることもあります。

家族仲が良いのなら、その関係を自分の死後も守るため、遺言を作成しておくべきです。

遺言をつくることで愛する家族が遺産相続をめぐって余計な気を遣ったり、相続手続で大きな負担を負わず済みます。

財産は使い切るから遺言は不要

「私は財産を使い切って死ぬつもりだから遺言なんて必要がない」という人もいます。

しかし実際問題として、自分が死ぬ時期に合わせて財産を使い切ることは不可能です。

自分の死期を正確に知ることはできないし、たとえ病気などで予想できる場合でも、そんな状態で財産を使い切ると必要な治療や介護まで受けられなくなる恐れがあるので、怖くてできないはずです。

どんな人でも、死ぬときには多少なりとも財産が残されるものです。

家族に迷惑をかけないためにも、その処分について現実的に考えるべきではないでしようか。

遺言を作成するにはまだ若い

もっと年をとってからというと、 いったい何歳になればいいのでしよう。

そういう人はおそらく、最後まで遺言を作成する決心がつかず、そのまま亡くなってしまう可能性が高いのではないかと思われます。

しかし、人間はいつ死ぬかわかりません。たとえ平均寿命に遠く及ばなくても、死が訪れることはあるのです。

法律上は、15歳以上で あれば誰でも遺言書をつくれるのですから、ある程度の年齢で自分名義の財産がある人は、遺言をつくるのに早すぎるということはありません。

かえってあまり高齢になると、身体が不自由になったり判断能力に問題が出たりして遺言がつくれなくなる可能性もあります。

子どもがいない夫婦など、年齢に関係なく遺言が必要なケースもあります。

また、子どもがいる場合でも、子どもが未成年ならそのままでは相続手続ができず、家庭裁判所で子どもに特別代理人をつけてもらう手間かかかるので、遺言があったほうが便利です。

また、年齢は若くても事業を経営している人の場合は、突然その人が亡くなると従業員や家族が困ることがあるので遺言は不可欠です。

遺言に記載した財産を使えなくなる

遺言をつくるとその内容に拘束されて、財産が自由に使えなくなるからイヤだという人もいます。

しかし、遺言に「全財産を誰々に相続させる」と書いたとしても、それで自分の財産になるわけではありません。

また、遺言に記載した財産のうち一部を消費、処分したとしても、死亡時点で残っている他の財産について遺言は有効となります。

財産が大幅に変化しても全く問題ありません。遺言はいつでも何度でも書き直すことができ、常に最新の日付の遺言が優先される決まりとなっています。

今回紹介しきれていない誤解も多々ありますが、代表的な誤解について解説しました。

遺言の作成には、相続においてメリットしかありません。

ただし、遺言の内容によっては逆にトラブルの原因となるケースもあり得るので、遺言作成の初期段階から行政書士や弁護士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。